はちみつドロップス
ちょっとばかしの重たい空気が漂う中で、
「だったらさ、皇楽を惚れさせちゃえばいいじゃん」
サラッと言ってのけた慶斗の顔は勿論いつもの爽やかな微笑みで。
天の脳みそには慶斗の発言が上手く伝わってくれない。
口をポカンと開いて間抜け面をさらした天の前では、
「そうだよ! 天さんが認めないんなら皇兄から言わせればいいんだよっ!」
手を叩いて喜ぶ藍楽が慶斗に賛同している。
当人を置いてけぼりにしたまま、
「学校とバイト中は俺がサポートするよ」
主婦な親友の恋路をおもしろ半分に見守る腹黒な悪友と、
「わたしは家でのアプローチを出来る限りやるよっ!」
兄の幸せを願う妹は、恋のキューピットとなるべく共に立ち上がろうとしていた……。
「えっ……いや。ちょっと……」
わたしは別に……。
なんて遠慮する本人の声が、この有り難迷惑なサポーターたちの耳に届くことはなかった。