はちみつドロップス
こんな時ほど隣同士の机が繋がっていることを苦痛に思うことは無い。


教師の目から疎遠な一番後ろの窓際の席。



斜め前には可愛いって言われるために産まれたような皇楽のお姫様(あくまで候補)の絵那。



恵まれたこの席を汚すハニーブラウンを、



「イタッ!!」



皇楽はイライラに任せて思い切り叩いてやった。



途端、夢現で机に突っ伏していたハニーブラウンが勢い良く跳ね上がる。



ガタンと音を立てて授業中の教室に立ち上がれば否が応でも視線は集中する。



「……高宮。またおまえは……」



集まった視線に状況を掴めていない張本人は、前に立つ数学教師の渋い顔を呆然と見つめる。



野球部顧問なこの数学教師は握っていたチョークをボキリと砕いた。



「えっ!? ちょっと! だって! 高原がぁっ!」


誰が見たって怒られるに決まっているこの空気に、彼女は隣で知らん顔して座っている皇楽を指差して抗議する……が。



「先生。授業を続けてください」



諸悪の根源はしれっとしたすまし顔で授業の再開を提案した。



「高宮。おまえは後で職員室に来いっ」


「……はいっ」



これ以上反論しても皇楽が叱られないことは今までの経験で学習済み。


渋々頷いた天の力無い返事と共に授業は再開された。
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