はちみつドロップス
「焼くのは俺がやるからあっち行ってろバカどもっ」
なんとかすっかり変わり果てた聖地を奪還した皇楽は、三人の侵入者を追い出しながらオーブンを温め始めていた。
「追い出されちゃったね……さすが主婦男」
追い出された三人は最後まで作り上げられなかった不満で唇を尖らせながらリビングに立ち尽くしていた。
「じゃあ……そろそろわたし帰るよ」
ありがた迷惑なサポーターたちに半ば無理矢理だったとは言え、目的をやり遂げた天がカバンに手を伸ばす。
「天さん! どうせなら焼けるまで待ってようよ! 朗楽も一緒がいいよね~? ねっ?」
これでは目的達成とは言えないと慌てて引き止める藍楽の傍らでは、朗楽がポカンと天を見上げていた。
「天?」
「なに? 朗楽くん」
天を見上げたまま制服のスカートの裾を握り、
「朗楽のクルマのハンバーグ天にあげる。だから居て?」
可愛い声で小首を傾げる朗楽は天の眠っていた母性本能を鷲掴み。
「うんっ! 天のハートハンバーグと交換しよう!」
気が付けば足元の朗楽をギューッとハグしてしまう程に骨抜きにされていた。