はちみつドロップス
好きなのに好きじゃない……
「ねぇ、天さん?」
「んっ?」
部活で帰りの遅い次男に代わって天を加えて四人で囲んだ夕食も終わり、
「これぐらいは出来る!」
と、自ら進んで後片付けを行う天と藍楽の女子二人。
天が洗った皿を濯いでいく藍楽が隣に目をやりながら静かに口を開いた。
「やっぱり皇兄はさ、ありのままの皇兄を受け入れてくれる人が合ってるってわたし思ったよ」
「……そんなことないよ」
「えっ?」
天を思って発した言葉を天自身に否定された藍楽は、驚いたように目を丸くするばかり。
皿を濯ぐ手を止めて隣を見れば、
「高原は器用だから。主婦姿隠しながら好きな子を大切にすることも出来る」
泡だらけのスポンジを見つめる天の横顔は元気が無いように見える。
今日、絵那に見せていた姿が天の発した言葉の何よりの証拠。
「特別な相手には特別な自分を見せることの出来る器用なヤツだからね。アイツは」
詐欺だよ! あれは!
こう言ってケラケラと笑って見せる天に合わせて藍楽はとっさに作り笑顔を貼り付けた。