はちみつドロップス
「昨日ね。高原くんのおかげで良いプレゼントが選べたからお礼にクッキー焼いたの」
にっこり笑って自分を見上げる絵那は同じ女の子の目から見てもすごく可愛い。
「ハンバーグ作るって言ってミンチ肉で遊ぶ誰かさんとは違うな。やっぱり」
イヤミ混じりに耳元で呟く皇楽を天は完全に無視。
「あっ、美味しそう」
無許可で手の中のラッピングを解いた例の誰かさんに、皇楽は鬱陶しそうに目をやりながら軽く足を踏みつけた。
バチバチと無言で二人が睨み合いを始める。
「天にも一個あげるって。はい」
二人の仲睦まじげ(?)な光景にクスクスと笑う絵那が、袋の中から綺麗に焼き上がったクッキーを取り出した。
「ごめんねっ。天が開けちゃったけど……」
「いいよ。サンキュ」
申し訳なさそうに口の開いた袋を差し出す絵那に皇楽の眼差しはやっぱり柔かい。
すぐ傍に居るのにまるで自分だけは蚊帳の外。
お姫様が王子様の為に作ったクッキーを無粋にも開封した上に一枚貰ってしまった自分は……ただの邪魔者でしかなかった。
手の中のクッキーを握りつぶしてしまいたいような。
この言い知れない胸の苛立ちは……どうやったら消えてくれるんだろう。
そんなやりきれない気持ちで天は手のひらのクッキーを見つめていた。