はちみつドロップス

勢い任せに教室を出たものの。
実際にトイレに行きたいわけでは勿論ない。



仕方が無いので廊下を往復して時間を潰そうと歩き始めた天を、



「あっ、天さんだ。おはようございまーす」



何故か三年の教室が並ぶ廊下に居た藍楽が呼び止めた。



笑顔で手を振る藍楽の傍らには、



「あっ……」



自分より五センチ程背の高い女の子が居て軽く会釈をしている。



「天さん。こちら高月 聖梨、通称ひぃちゃんです」


「クラスは一緒になったことないから……初めましてかな?」



こう言って聖梨は涼やかな顔付きを緩めて天に小さく笑いかけた。



「ひぃちゃん。こちらがさっき言ってた高宮 天さん」


「あぁ! 皇楽くんの……」



藍楽の紹介にやたら大きく頷いた聖梨がポンと手を叩いている。



そんな聖梨の態度を不思議に思った天が、



「ちょっと待って……。さっき言ってたって何を?」



なんだか嫌な予感を感じながら恐る恐ると藍楽に真相を尋ねてみる。


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