はちみつドロップス
「ちょっと皇兄! 気持ち悪いってひどいよ!」
あまりの兄の悪態に見かねた妹はつい口調を荒げて兄に噛み付いた。
それを何食わぬ顔で受け流す皇楽に藍楽の怒りは沸騰寸前。
悔しそうに下唇を噛み締めた藍楽に、
「高原の言う通りだよ。わたしが高原好きなんて……有り得ないからっ!」
いつものヘラヘラとした笑顔をまた浮かべた天が気持ちを否定し続ける。
「天ちゃん……」
その表情が聖梨には痛々しく見えて、心配そうな顔で目の前の天を見つめる。
怒る藍楽と黙り込む聖梨と天に、五番テーブル一杯には重たい空気が漂い始めた。
そこから逃げ出すように、
「あっ! わたしゴミ出し頼まれてたんだった~」
席から立ち上がった天が複雑な表情で自分を見つめる二人に軽く手を振って去っていく。
「今のは高宮、傷付いたんじゃないか?」
一部始終をこっそりと見届けていた慶斗がいつの間にか皇楽の背後に立ち、
「はっ? 何が?」
一人状況を掴めずにキョトンとしている皇楽に苦笑いした。
「気持ち悪いなんて言ったらダメだよ。天ちゃんだって女の子なんだから」
「そんなので傷付くタマかよアイツが」
小さく呟いた聖梨の言葉を鼻で笑う皇楽に三人は思わず同時に溜め息をつく。