はちみつドロップス

次の日。



五限目の授業前に連れ立ってトイレに来ていた天と絵那。



鏡の前で身だしなみを整える絵那をぼんやり見つめる天に、



「……高原くんってさ」


「んっ?」



切り出した第一声で出された名前に天の首が小さく傾いた。



「この前買い物付き合ってくれた時に思ったんだけど……二人の時はすっごい爽やかに笑うの。いつもの仏頂面が嘘みたい」


「へぇっ。そうなんだ」



鏡越しに自分の顔を見ながら声を弾ませる絵那に、天は精一杯自然に笑って頷いてみせる。



天の胸が言い知れぬモヤモヤとイライラで埋まっていく。


そんなことに気付くはずもなく、



「昨日もバイト帰りにたまたま会ったんだけどわざわざ送ってくれたんだよ」


案外優しいよねっ



なんて嬉しそうに笑っている絵那に、天が貼り付けた笑顔は今にも壊れてしまいそうだ……。



胸のモヤモヤとイライラがどんどん膨らんでいく。



ホントの皇楽を知っているわけでもないのに。

まるで自分が皇楽を一番知っているような口を利く絵那に、腹を立てている自分に気付いてしまった。



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