はちみつドロップス
必死に自分の嫌な感情を掻き消そうとするのに、気持ちは追い付いてくれない。
それどころか、
「付き合ったら大切にしてくれるタイプだよ。きっと」
「じゃあ付き合えばっ?」
吐き捨てるような強い口調で言い放った自分に思わずはっとする。
顔を緩めた絵那が天の嫉妬に追ううちをかけたのだ。
「天……?」
驚いたように自分を見つめる絵那の顔でふっと我に返る。
「あっ、えっと……」
しどろもどろになりながら必死に言い訳になる言葉を探す。
でも。
真っ白になった頭の中にそんなものは浮かんでは来ない。
「な、何でも無い! 何でも無いからっ」
「ちょっと! 天っ!」
渇いた笑いをひたすら浮かべながらトイレから逃げるように出て行く。
足早に廊下に飛び出した天はそのまま教室に背中を向けて真っ直ぐに歩きだした。
斜め下をぐっと見つめる瞳は、まるで涙を堪えるように大きく揺れている。
嫉妬している。
皇楽を好きになればなるほど、自分の中に湧き上がる苛立ちや嫉妬が天自身を苦しめていた。
予鈴間際で駆け込んだ図書室の一番奥の席。
人気の途切れた室内に入るなり天はそのまま机に顔を突っ伏した。