はちみつドロップス

ベテラン中年教師の力の抜けた授業は単調でとにかく眠い。



ただでさえ昼休み明けでお腹の膨れた生徒たちを更に睡魔が誘う。



無駄に教室の中が静かなのは、半分が机の上で違う世界にぶっ飛んでるからだ。



そんな生温い空気の中で欠伸をかみ殺していた皇楽は違和感を覚える。



いつもなら真っ先に自分の陣地へ遠慮ナシに入ってくるハニーブラウンが居ない。



二、三度辺りを見渡してみてもそこには見慣れた風景しか無い。



今まで授業中に机の上に沈んでいる姿は幾度と無く見てきたが、サボってるのは初めてだ。



何の気なしに空っぽの天の席を見つめていた皇楽の視界に絵那の顔がチラチラと映る。



さっき思いがけず行き違いになってしまった天が教室に居ないことに気付いたのは本鈴間際だった。



天を探しに行く間もなくあっという間に授業は始まる。



「花井?」



そんな事情も露知らず。
心配そうに顔を困らせた絵那が皇楽の声で視線をそちらに向ける。



そんな表情も可愛いなんて思ってる不謹慎な煩悩を振り払い、



「コイツは?」



珍しく空っぽの隣の席を指差した。




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