はちみつドロップス
授業中にサボる場所と言ったらいくつかの定番がある。
常習の人間ならお気に入りの場所があるのかもしれないが……天は違う。
初心者の女子向けならば保健室か図書室だが、こちらの保健医は無駄に厳しい。
きちんとした審査(診断)を通過しなければ授業中にベッドにおいそれと寝かしてはくれない。
ただ気紛れに授業をサボる奴が、わざわざ危ない橋を渡って地雷を踏みに行くとも思えない。
それに引き換え、図書室の司書のお姉さんは優しくて寛大だ。
廊下を走りながら結論に至った皇楽は真っ直ぐ図書室に向かう。
そのまま息を整えてゆっくりと奥にある閲覧コーナーへと足を運んだ。
案の定で惰眠をむさぼるハニーブラウンを発見。
長机に突っ伏したハニーブラウンに近付き、頭をひっぱたいてやろうとした皇楽の手が止まる。
いつもなら口の端をキラキラさせている天の寝顔は、何故か目元に小さな雫を残していた。
それが昨日の泣き顔と重なり。
ひっぱたくのを躊躇っていた皇楽の手がゆっくりと天の頬に触れた。
冷たくなった雫を指先で払って、そのままの優しい手つきがハニーブラウンに伸びる。