はちみつドロップス
小さめのスポーツバッグを肩に、二階の職員室前の廊下から天は校門を見下ろしていた。
日誌はとっくに担任に渡している。
帰る支度が整っているのに動けない理由は、校門をくぐろうとしていた見慣れた二人の背中を見送っていたから。
小さくなる背中をぼんやり見つめていた天に、
「天さーんっ」
少し息を切らせた藍楽が、廊下の向こう側からニコニコした笑顔を浮かべながら駆け寄ってきた。
そのまま天の隣に立つなり、
「何やって……あっ! 皇兄だっ! えっ!! あの女の人誰ですかっ!?」
一気にまくし立てる藍楽がグイグイと天に詰め寄っていく。
「落ち着いて藍楽ちゃん! 帰りながら話そ?」
鼻息の荒い藍楽を宥めながら天は玄関へと足を進めていった。