はちみつドロップス
帰り道沿いにあるファーストフード店で、紙カップに入ったレモンティー片手にカウンター席へ腰を下ろした。
絵那が天の親友であり皇楽の片想いの相手であることを告げれば、
「はぁ……。ホント皇兄ってば学習能力無いなぁ」
妹は深い溜め息を吐きながら頭を抱えた。
「小さくて女の子らしい人に惚れては、主婦なこと打ち明けられずにすれ違いで玉砕……このパターンばっか」
だから、次こそは皇兄のこと全部知った上で好きになってくれる人が良いと思ったのに……。
レモンティーのストローを口に含みながら藍楽の愚痴は止まらない。
「天さん。……諦めたりしないでね?」
「えっ?」
藍楽の思いがけない言葉に目を見張った天は予想通りだったらしい。
「確かに。親友が相手は辛いかもしれないけど……皇兄には絶対に天さんがお似合いだから」
力強い口調で言い切ってしっかりと天に釘を刺した。
「だから……わたしは高原のこと」
好きじゃない。
いつものようにヘラヘラ笑いながら言えれば楽になれるのに。
もうこれ以上は嘘がつけなかった。
それくらい天の中で皇楽への想いは大きくなっていたのだった。