はちみつドロップス
皇楽の笑顔を怖がる天を一瞥した慶斗がしばらく黙り込む。
そのままじっと天の顔を見据え、
「ホントのコト、言っていい?」
ゆっくりと口を開いた慶斗に天は勢い良く首を縦に振った。
尚も渋って口を閉ざした慶斗は、
「……はぁ。高宮の為を思って黙ってたのに」
じっと自分を見上げてくる視線に観念したように溜め息をついて、
「今日バイト終わった後、花井さんと映画のレイトショー観に行くらしいよ」
仕方なさそうに重たい口を開いた。
「……えっ?」
「はぁ……だから言いたくなかったのに。……花井さんから聞いてなかったんでしょ?」
呆然として慶斗を見上げる天。
溜め息混じりに尋ねる慶斗は固まってしまっている天に、
「誘ったのは花井さんだよ」
きちんと追い討ちをかけてからオーダーを取りに行ってしまった。
自分に内緒で絵那が皇楽を誘っていた。
鈍く動く頭にいくらその言葉を送り込んでも、天の脳みそには上手く届いてはくれなかった。