はちみつドロップス
保育園の終了時間はバイトの終わる時間と同じ。
店長に事情を話し、特別に携帯を所持することを許された皇楽に藍楽からも雄楽からも連絡はない。
「……上がらせてもらいなよ」
さっきからソワソワと落ち着かなげに時計ばかりを見ている皇楽に天が声をかける。
「朗楽なら大丈夫だ」
自分の私情で周りに迷惑をかけることを皇楽は嫌っていた。
何でも無いような顔で接客に向かう皇楽の背中を見つめ、天はキュッと下唇を軽く噛み締めた。
好きな人を助けたいのに助けられないもどかしさが天の全身にじわじわ広がる。
バイト終了まであと三十分。
それが少しでも早く過ぎてくれることを、天はひたすら祈らずには居られなかった。