はちみつドロップス
バイトが終わると同時に着の身着のまま、持つ物も持たずに皇楽は店を飛び出した。
静まり返った保育園の中に駆け込み、
「おかえりなさーい」
にこやかに迎えてくれた月先生に一先ず一礼をした。
月先生に促されるままに足を進めれば、
「あっ……」
お残りの園児もすっかり出払った空っぽの保育室の隅にちょこんと座る朗楽が居た。
「朗楽くん。お兄ちゃん来てくれたよ」
入り口から声を掛けた月先生にずっと俯いていた朗楽が顔を上げる。
「ごめんな。朗楽」
しゃがんで小さく微笑んだ皇楽を見るなり、
「皇にぃっ」
駆け寄った朗楽が皇楽にしがみついてポロポロと泣き始めた。
「こんなに遅いの初めてだったから……びっくりしちゃったんだよね」
遅かった皇楽を責めるでも無く。
ただ優しく笑って朗楽の頭を撫でる月先生に、
「すみません」
皇楽は申し訳なさそうに頭を下げた。
「いえいえ。わたしは良いですから」
月先生の視線に促されて皇楽は泣いてる朗楽を抱き上げた。