はちみつドロップス
それもそのはず。
カフェ バタフライは通称ホストカフェ。
ウェイターは全員若いメンズ。
しかも給料は時給1000円+出来高。
詰まるところ。
競争相手が増えるだけでバイトたちからすれば喜ぶような要素は一つも無い。
挙げ句。
教育係なんかに指名された日には、親切丁寧に無料で教育しなければいけないという貧乏クジさえ引きかねない。
自分の仕事をしながら自分と同じモノがついた野郎にわざわざ優しく教えてやる程、世の中甘くはない。
どうでもいい。
むしろウザイ。
なに面倒増やしてんだ店長バカヤロー。
という空気が店に充満していく中、
「みんな元気無いなぁ。いつもの笑顔は? ハイッ! 笑って迎えてあげようねぇ?」
テンションと体力の無駄使いをする店長は一人で拍手喝采。
「店長。もう店開ける時間です。さっさとしてください」
ベテラン大学生ウェイターがメガネをくいっと上げながら、はしゃぐ店長に苛立たしげに言った。
「せっかちだなぁ~。そんなに楽しみなのか……」
「さっさとしてください時間です」
ベテランウェイターのメガネの奥の眼光が鋭くなり、萎縮した店長は思わず口ごもってしまう。