はちみつドロップス
初めは自分と居れば男が寄ってくるからかと、天に下心があると思って敬遠していた。
だけど。
それが取り越し苦労だってことにはすぐ気付いた。
癖のあるショートヘアに履き潰したスニーカー。
授業中の大あくびや居眠り……。
とにかく男子の目を気にしている風にはお世辞にも見えず、裏表の無いただの単純な奴だとわかる。
だとすれば。
尚更天が自分に構ってくる理由がわからない。
「なんでわたしに構うの? 同情でもしてる?」
そんな苛つきが絶頂に達したのか、敵意を剥き出しにした絵那が勢い良く天に噛みつく。
「わたしは一人でも平気だからっ」
自分を突き放した絵那に一瞬面食らったように見つめた後、天はにっと笑って見せた。
「違うよ。わたしも花井さんと一緒なんだ」
天は男女に分け隔て無い分、八方美人と女子たちに陰口を叩かれていた。
理由は違えど置かれていた状況は同じ。
「一人が平気って花井さんは言ったけど……やっぱり一人より二人の方がいいって」
わたし寂しがりだからさ、一緒に居て欲しいなぁ。
こう続けてヘラッと笑ってみせる天に思わず毒気を抜かれた。
この子なら繋がるのも悪くないかも……。
こう思った絵那が初めて天に笑い返した顔は、どんな男子の前で見せる笑顔よりずっと自然体だった。