はちみつドロップス
絵那の口からポツポツと語られた二人の出会い。
それに特に大きな反応も見せず、相槌を打っていた慶斗がゆっくりと口を開く。
「……んで? だったらなんで皇楽にちょっかい出すワケ?」
絵那自身が唯一認めた親友の恋路を、敢えて邪魔する理由がわからない。
慶斗が怪訝そうに絵那を見下ろしていると、その瞳にはジワジワと涙が浮かんでいく。
「天が……取られちゃうみたいで嫌だったの」
だから皇楽と天の間にワザと割って入ったのだと言う。
零れた涙と共に出た本音。
隣に居るのが心地よい親友の初恋で、自分の居場所を奪われるのが怖かった。
一人より二人の方が良いって教えてくれた天だから、絵那はずっとその隣に居たかった。
鼻をすする声だけが夕暮れの教室に響いていた。