はちみつドロップス
こんな筈じゃなかったのに……

天と絵那が教室から出るより一足早く、教室前から並んで立ち去った皇楽と慶斗。



ひたすら無言の決して居心地が良いとは言えない空気の中、先に口を開いたのは慶斗の方だった。



「……だから俺言ったじゃん。高宮、好きで居てくれなくなるって。……61ページ目で」


「61ページ……?」



ため息混じりに吐き出した慶斗の呆れたような声に、皇楽は怪訝そうに首を捻った。



「とにかく俺は忠告したって言ってんのっ。忠告してやったのにまんまと忠告通りになってんじゃねぇよっ」



それを皮切りに慶斗の口調は荒くなり更に毒づいていく。



「……だって。だからってアイツの気持ちをあのまんま受け入れたら、花井の代わりにしてるみたいだろっ」



天は皇楽が絵那に想いを寄せていることを知っていた。


それに自分自身が皇楽の恋愛対象外であることも。



「はぁっ……。なんで恋愛対象外なんて言っちゃうかな……おまえ」


「……うるさい」



そんなものは自分が痛いくらいわかっている。



バタフライの裏で天の涙を見た時から皇楽の中で天に向ける感情は変わり始めていた。



それを今更認められるワケもなく、二人分のため息は夕焼けの空にこだました。



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