暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
目の敵
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あれから数日が経過した。スフィア様はよく外へ出るようになり、私はというと荒れた園庭のお手入れに勤しんでいた。
「今日も暑いわね〜………」
だいぶここでの暮らしに馴れたとはいえ、この暑さだけは未だに馴れない。
首に掛けていたタオルで汗を拭うと、腰に掛けていた水筒から水分を補給する。
「ふぅ…………っ」
スフィア様が起きる前の早朝に、私だけ早起きをして園庭のお手入れをしているのだが、その早朝でさえこの暑さだ。
きっと昼頃になればもっと気温が上昇するのだろう。
「ボサボサ頭の木は剪定したし、地面に生える雑草も全て処理した。土もならしたし…………あとはこれだけね」
私は時間と日にちをかけて手入れした庭園を眺めつつ、足元に置いてある苗に目を向ける。
「上手く育てられるといいのだけど…………」
これは白薔薇の苗で最初の時私のお世話係だったギャビンさんに相談したところ頂いたもので、その他にも色んな苗を頂いた。
しかし、花は好きだが実際に育てたことのない私は、それら全てを枯れさせ無駄にしてしまわないか、不安で仕方がない。
いや…………弱気になってはダメだ。絶対に育て上げてみせる。
謎の使用人魂に燃えつつ、その苗を植える為に土を更に耕していたとき、ある人物が私を見かけて駆け寄ってきた。
「朝から何をしているの?」
「スフィア様……!」
手に持っていたクワを地面に置くと一礼する。
まだ寝間着姿のスフィア様を見るところ、恐らく私に着替えを手伝ってもらう為に探していたのだろう。
まさかこんなに早く目を覚まされるとは思ってもいなかった。
これは誤算だ。
「……土を耕していたのです」
「土を?」
「はい。やはり何もないのは寂しいですし、この間一緒にご覧になった花のようにここでもたくさんの花を咲かせる事ができたなら、きっと素敵な庭園になると思ったのです。それで、この苗を」
そう言うと下に置いてあった苗に目を向ける。
「ここはずっと手入れさせず荒れていたから、育てるのはきっと大変よ?」
「ご心配いりません。だいぶ整って来ましたし、あの花が咲いていたところを見ると、一応咲ける環境にあるようです。苦労するとは思いますが……(笑)」
私はそう言って苦笑する。