暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「ほう。あんたセッティングも出来るんやな」
その様子を見て王子様は驚いた表情をした。
「アルヴァン様。アニは優秀な侍女でございます。その他にも沢山の事を全て一人で行っているのですよ」
そんな王子様にスフィア様は私を自慢そうに話した。
全然自慢出来るようなものではないと思うのだが…………と私は内心思いつつ王子様の方へ視線を向けると、とても興味深そうに「そうなんや〜!」と相づちをしているのが見えた。
きっとスフィア様が楽しそうに身の回りの出来事の話をしていたので、王子様も興味深そうに相づちをしていたのだろう。
「おかわりいかがですか?」
「あぁ、頂こう」
王子様のティーカップに追加で飲み物を入れる。
「しかし、この飲み物は初めてや。何て言うんや?」
「あ、これはですね…………」
今日の紅茶は……………いや、お茶と言ったほうがいいわね。
王子様とスフィア様に淹れたのは『マイルノワーゼ』という飲み物で、薬草を煮て作られたもの。
甘みがないので甘味を入れないと美味しくないのだが、世間に流通している美味しい飲み方だと、蜂蜜を入れて飲むスタイルで、美容にも良い事もあり貴族令嬢や貴族婦人の間で大流行していると以前アンディード帝国にいた時、使用人がそう話していたのを聞いた。
輸入品となるので審査や距離を考え届くまでに日がかかり、その為実際には飲んだ事はないが、この国からその薬草が使われたティーパックを生産している国が何と近かった為、スフィア様専用にお願いし、取り寄せたのだ。