暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
誘惑
*
「………これは」
何日か前に手元へ届いた『ある手紙』を見て、ガルゴ王国の王様の顔が険しいものへと変わる。
「どうかなさいましたか?王様」
それをみて仕事の補佐をしていた宰相の手の動きが止まる。
「あぁ。他の事で後回しになっていたが、これはアンディード帝国の王からの手紙だ」
そう言ってその宰相にも、見ていた手紙を渡す。
「……これは驚きました。『いきなりの手紙申し訳なく思う。さて、いきなりではあるが我が国の発展の為貴国と交流を深めたく思い、筆をとった次第だ。無論、ただでとは言わない。貴殿が許すのであれば親交を結び、互いの国の発展の為、こちらへの来国も快く許可しよう。貴殿からの返事、楽しみに待っておる。』……ですか。王様、アンディード帝国とはあの噂に聞く……」
「そうだ。この何年かで諸国を制し、荒れたち地や反国軍を全て鎮圧し国の立て直しを一年でやり遂げたという実力のある若き王。その武力から他国からも恐れられ、今では要注意国として世間を騒がしていると言うあの国だ」
そう言って王様は顎下の黒ひげを触った。
「新約を交わした国をあまり聞きませんが……まさか、我が国に……。ここからだいぶ離れているとは言え、いつアンディード帝国が攻めてくるかも分からない暴虐な国です。いかがなさるおつもりですか?」
王様はまだ髭をひげを触り、黙っている。
「王様……っ」
「………そう急かすのではない。我はこの手紙を読んだときから既に決めている」
「そうだったのですか?では……」
「今から返事の手紙を書こう。筆と紙を」
「は!!」
その言葉に筆ペンと真っ白で綺麗な紙が用意された。
「これは我が国に利益をもたらす交渉である。受けねば勿体なかろう」
「と仰りますと……つまり!!」
「敵になれば恐ろし、味方になれば……それこそ怖いものなどない。官僚らやその他使用人に伝えよ。下手な動きは許さぬ。無礼のないようにあたれとな!!!」
「御意!!」
その威厳ある言葉に宰相は深く頭を下げた。
そして、その手紙は夜を明けガルゴ王国から出発された。