暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「スフィア様……これが」
昼過ぎにスフィア様の住むハレムへと届いたのは綺麗な封筒に入れられた手紙で、後ろに書かれてあった差出人はと言うと………アルヴァン様の第9妻であるリマーシャ様からであった。
私はこのリマーシャ様を存じないけれど……他の側妻様は皆スフィア様を見て見ぬふりをしていたので、やはりこの手紙に警戒心を感じずにはいられなかった。
何かの罠ではないのか?そう思うのが妥当だろう。
「中にはなんて書いてあるのですか?」
主様より先に中身を見ることは出来ず、取りあえず中傷が書かれていない事を願いつつこの手紙を手渡したのだが……内容はいかがなものだろう。
そんな私の問いにスフィア様は中に書かれてあった手紙を驚いた表情で見ながら、口を開いた。
「……お茶会だわ」
「お茶会ですか……?」
「えぇ。ここの側妻様は私も含めお茶の時間が大好きなの。それで頻繁にお茶会を開いているのだけど……そのお茶会に誘われたのは久しぶりだわ」
つまりその側妻様主催でハレム内で行われるお茶会を言うことか……ますます不安だ。
「そのお茶会には侍女も付き添ってよろしいのですか?」
出来れば一緒について行き、無事であることを確かめたいのだが……。
「主催者側によって侍女も同席可能であるけれど、今回は侍女の同席を不可にしているわ」
側妻様だけのお茶会……何かありそう。
「スフィア様、裏に何かあるように感じます。それに侍女不可も含め、この手紙が部屋の前の廊下に置かれてあった事も明らかに不自然です。行かれない方がよろしいと思われますが…」
せっかくのお誘いではあるのだが……今回はやめた方がいいと個人的に思う。