暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
私は思い切ってある相談をしてみる事にした。
「あの……無礼を承知の上で申し上げますが、現在スフィア様は他の側妻様から嫌がらせを受けており、私も大変困っております。本人は大して気にしておられないご様子でしたが、実際のところは分かりません。ですので、どうかフィグリネ様のお力でお止頂けないでしょうか…?」
このハレムを取り仕切る方であれば、止める事など出来ないわけではないと思う。
「侍女の分際で大変失礼ではございますが、どうかお願い出来ないでしょうか?」
侍女のお願いを聞いてくれるかなんて分からない。でも、私はこの方がもしかしたら助けてくれるのではないかと浅はかにも思ってしまった。
そう、願ってしまった。
「え……事情が良く分からないけれど、スフィアが他の子から嫌がらせを受けているのね?」
少し困惑したようなフィグリネ様の声。
「……はい」
その問いに私は申し訳なさそうに口を開いた。
「そんな話初めて聞くけれど、それは本当の話かしら?」
フィグリネ様は突如発した私の言葉を疑っているようで、しかし確かに今日初めて会った侍女からそんな事を言われても信じられないのは当然の事だ。
だけど、私は嘘などはついていない。
「私の申したことに偽りはございません。フィグリネ様の所だけご飯が届けられなかったり、泥やゴミなどを廊下に置かれるなどの陰湿な被害まで起こりました」
「まぁ……なんと」
その話を聞いてフィグリネ様は思わず顔をしかめ、扇で口元を隠した。
お茶中には少し汚い内容だったかもしれない。
………がしかし、今後の事を考えるとどうにかしてほしい問題だ。
私がいずれここから立ち去る時、今のままではとても不安でしかない。