暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】


「………え。今…何と仰いましたか?」

思わず私の耳を疑い聞き返す。

「私の侍女にならないか聞いたの」

「…………」

思いもよらない言葉に絶句する。

「今日こうして会ってみて決めたの。私(わたくし)は侍女として貴女が欲しいわ。そして、反対にこれは交渉でもあるわ。もし貴女が私(わたくし)の侍女となるのであれば、他の子に止めるよう言い、そして新たに素敵な侍女を付けるわ。逆に貴女が私(わたくし)の話を断れば簡単な話、今まで通りに戻るだけ。そして、機会を失う事となる」

この交渉は確かにこれとない機会だ。

逃がせば二度とないだろう。

しかし……反対に私がフィグリネ様の元へ行かないといけなくなるのか…。

それは嫌だ。フィグリネ様が嫌というわけではないが、スフィア様の元を離れたくはない。

例え素敵な侍女が入ったとしても。

だけど……もし私が行けばスフィア様の嫌がらせを止めて頂ける。

なんと魅力的な話だろう。

しかし……私は

「あら……その表情はなしと言うことかしら?」

「……私はスフィア様の侍女ですから、離れるわけにはいけません。せっかくの機会ですが……行くわけにはいかないです」

スフィア様と約束した。

使命が終わるまでずっとお側に居ると。決して離れたりなどしないと。

だからこの魅力的な話に揺らいだらダメだ。

せっかくの機会だったけれど、違う道を探すしかないようね。


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