暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「………中でお話し致しませんか?」
「良いでしょう。案内しなさい」
恐らくアレだろう。
早くも返事を聞きに来たのだ。
まだあれから日が経っていないと言うのに、フィグリネ様は早く聞きたくて仕方がないご様子というわけか。
「………で、何のお話でしょうか?」
私は分かっていたがあえて要件を聞いてみた。
すると、
「フィグリネ様はお前の返事が聞きたいそうよ。今ここで聞かせてはくれないかしら」
やはり私が思っていた通りだった。
もしかすると……フィグリネ様はスフィア様がいないと分かっていて、ここへ使いを送ったのでは?
そもそも今開かれているあのお茶会もフィグリネ様の策略なのだろうか。
以前の言葉を聞いていたらそう思わずにはいられない。
「私の返事……ですか」
まるで、すでに答えが一択しかない脅迫のようだ。
「私は………
フィグリネ様の侍女になりましょう」
しかし、その代わりに。
「約束だけは守って下さい……とフィグリネ様に伝えて下さい」
そうでないと私がフィグリネ様の元へいく意味がない。
「分かりました。伝えておきます」
きっとこの人は私とフィグリネ様の約束など知らないと思うが、大して驚きもせずただ真顔で私の問いにそう返事をした。
そして、『ある物』を私に手渡すと最後の用事が済んだのか、軽く挨拶を交わしてその場から立ち去って行った。