暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
使命が終わるまでスフィア様の元にいると言ったのにね……私。
「上からの命令で明日から第一妻のフィグリネ様の侍女になる事になりました。私の代わりに新しい侍女が数人こちらへ移動するみたいですので、ご安心くださいませ」
そう言ってにこやかな笑顔を見せる。
「………何を言っているの?」
「何をと申されますと?」
「…………」
自分でも私がスフィア様に向けておかしな事を言っている事は分かっているが、こうでもしなきゃ怪しまれるし、フィグリネ様との約束を悟られないようにそう言ってしまったのだ。
しかし、スフィア様のご様子を見ているとやはり心が痛む。
だけどここでその態度を変えてはダメだ……。
「短い間ではございましたがスフィア様の侍女になれて、とても楽しかったです。ありがとうございました」
そう言って目の前で茫然とするスフィア様へ向けて深くお辞儀をする。
「意味が……分からないよ」
頭の方からそんなスフィア様の今にも泣きだしそうな小さな声が聞こえてきた。
『ごめんなさい…スフィア様』
私は何も出来ない。ここの者でもない。
私が唯一出来る事はスフィア様の為にハレムの長であるフィグリネ様の言う事を聞いて、スフィア様の安全を守る事ぐらい。
「ねぇ……もしかして私アニに何かしたかな?私そう言うのに鈍いみたいで……勝手に周りから誤解されちゃうの。だから、もし何かしていたのなら教えてほしい……」
我慢の出来なかった目から涙を流されつつ、スフィア様は私の手を握る。