暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
微かに震えているのが分かった。
………きっと怖いんだ。また近くにいた誰かがどこかへ行ってしまうのが。
そして口を聞いてくれなくなってしまうんじゃないかって。
でも、今回は違う。私は違うところへ行くがスフィア様には代わりに新しい侍女がつく。
つまり、一人ではないというわけだ。
「スフィア様は何もしておりません。ただ、私は普通の侍女でございます。そのような私が上の指示に逆らうわけにはいかないのです」
「な、なら……私がその者に中止するよう直訴します!そしたら問題がないでしょう?」
「………確かにそうでございますが」
流石にあそこまで言えば、納得してくれると思っていたが中々引いてくれないみたいだ。
確かにスフィア様は側妻様なので私より上の侍女に発言して覆す事は出来る。
………が、そうしてしまうと約束した意味がない。
「……ですがスフィア様のお立場が危険になります。例え自分より上でなくとも第一妻であるフィグリネ様の侍女になる話を阻止したなどと話が出回ってしまいますと、人によっては盾ついたと勘違いされていまわれます」
まぁ、今私が言ったことも決して考えられなくもない出来事だ。
それに………フィグリネ様なら何かとしそうな感じはする。
スフィア様はおそらくフィグリネ様の事を良くは思っていない。だがそれは嫌悪と言うよりは怯えているといった感じ。
だから相手がフィグリネ様となれば口は出せないし、出そうと思わないだろう。
「………」
やはり私の思ったことは当たっていたみたいで、その後スフィア様は気を悪くしひたすら黙り、何を話しても口を聞いてはくれなかった。
こんな事は初めてで正直スフィア様がこのような態度をお取りになる事に対しても驚いているが、あぁ見えてもスフィア様はまだ14歳だ。
今まで十分すぎるほどに、しっかりし過ぎていたくらい。
だから今は気持ちの整理がつくまで、ソっとしておこう……。
その後はいつも通りの作業を難なくこなし、その日を終えた_____。