暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
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ガルゴ王国の王宮前にとある国の紋章が入った馬車と馬等が停まった事により、その場は混乱と驚きに溢れかえっていた。
そしてその王宮から慌てた様子で現れたのは、銀の刺繍が施された薄紫色の貴族風な服に身を包んだ40代後半の男性で、馬車の前で足を止める。
「……このような手薄で失礼致します。私(わたくし)はガルゴ王の補佐をしております宰相のマッソン・ガルディーニ・ルトルスキーと申します」
そう言って馬車に乗った者に向かって深くお辞儀をする。
それに気づいた仲間の者がスッ…と馬車のドアを開くと中から紺色の髪をした背の高い男性が姿を見せた。
それを見ていた周りの女性はその容姿に思わず歓声を上げる。
「いや、こちらも早くついてしまったようで申し訳ない」
「そ、そのような……滅相もございません!」
「この馬車を引く馬があまりにも元気な奴だったので数日も早くついてしまったのだ」
そういって男性は馬を見ながら苦笑する。
対する相手の宰相は少し困った表情をしつつ、恐る恐る言葉を発した。
「……思いもよらないお早めのご訪問でしたので、失礼ながら客室の手入れやその他準備が整っておりません。早急にご用意致しますのでそれまでの間王様に会われてみてはいかがでしょうか」
「そうであるな。では、案内せよ」
「かしこましました。こちらでございます」
その案にのると、その宰相は一見にこやかな表情を浮かべつつ先頭を歩き、その後ろをその者等がついて行く。
「………まずは成功だな(笑)」
前に居る宰相に聞こえない程度の音量でそう呟いたのは馬車から下りてきた男性で、その男性はと言うとアンディード帝国の王であるリードだった。
「次の作戦も上手くいくでしょう」
「抜かりはありません」
後ろには宰相のファンやアニーナの特別護衛をしていたクレハもいる。
ついでに言えば……。
「まずは私(わたし)にお任せ下さい」
第一騎士団団長のシュライク・ギャビンも一緒だ。
なぜこのメンバーがガルゴ王国に居るのかと言うと………今から数日遡らなければいけない――――――――。