暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】


「ここから大分離れた砂漠の地であり、そこの王族は皆赤い髪をしているそうだ。お前なら……その意味が分かるであろう?」


「赤い……髪。―――…っ!!まさか!!」

陛下のその言葉にクレハはある人物を思い浮かべた。

「そうだ。王位から近かれ遠かれ、どちらにせよ王族に変わりがない」

アンディード帝国ではあまり伝わっていない国名だからか、その王族の容姿や特徴を思い出すのに苦労した。

過去の記憶のみであるが妃は恐らくその場にいる。それは恐らく間違いないだろう。


「では、相手はお妃様と分かっていて攫ったのでしょうか?」

その話を静かに聞いていた第一騎士団団長のシュライクはゆっくりと口を開き、その言葉に対して隣のファンが返答する。

「そこは分かりませんが、状況が状況です。偶然この国に訪れたその者等がどこかしらで闇市の情報を仕入れ、そこで知らないうちに買ってしまったという推測も捨てがたいです」

「確かに…そうですね。まさかそこにお妃様がおられるとは思わないでしょうし」

シュライクのその言葉にその場にいた皆が苦笑する。


「しかし、ここは人身売買が禁止されている国ですのにどこでそんな情報を仕入れたのでしょうか?そこのところが実に気になります」

捕まえた地方の官僚は最も過酷と言われる地下牢へ移され、その者に加勢した協力者に関しては普通の牢獄へ入れられたのだが、どの者も有力な情報は一つも吐かなかった。

地下牢に入れられた主犯格の官僚に関しては拷問の苦痛に耐えきれず死んでしまった為、商売に関してや奴隷の仕入れ先に関して等の詳しい情報は聞き出せず、唯一聞き出せた事は旅人らしき集団が奴隷を買いたいと多額のお金でその奴隷の女を買っていった事、そして地下に掘られた国境を抜ける秘密通路が掘ってあった事ぐらい。

もちろんその通路は早急に塞いだ。

外部からの侵入を防ぐ為に。


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