暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「そうだわ、この間頂いたお茶の葉がそこに置いていたのだけど私(わたくし)に入れてくださらないかしら?」
フィグリネ様の視線の先には棚の中に置かれたお茶の葉が入れられていると思われる袋があり、私はそれに近づくと中身を取り出しお茶を淹れる。
甘い香りが鼻をかすめる。
―――――コトン…。
「まぁ…良い匂いね♪」
フィグリネ様は香りを匂うとそう言って幸せそうな表情をされた。
確かにそのお茶からは果物のような甘い香りが漂ってくる。
取り合えずフィグリネ様の元へ置いた後に他の側女様の元へも配り、その香りを皆が絶賛した。
「どこで手に入れましたの?」
「とても良い香りですわね!」
そのような質問にフィグリネ様は嬉しそうな表情で返される。
「これは『侍女』からプレゼントされた品ですの。私(わたくし)がいつもお茶をしているのを見ていたのか、これが美味しいと言って、くれたのですわ」
「そうなのですね!それはとても良い侍女ですわ」
「フィグリネ様が慕われています証拠ですわね!」
侍女からプレゼントされたというその紅茶。
私でない事は確かなのだけど、何だかチラチラ…と視線を感じるのは気のせいよね?
しかもよく見たら羨ましそうな顔だし。
いやいや、私ではないですよ…っ!?
口に出しては言わないが、そう心の中で思いつつその場に立ち続ける。
いや、この時何か言った方が良かったのだろうか。
まさか………思うまい。
私ですら思わなかったのだから。
このお茶に――――――――…………
「…………っ!!!!??うぐっ……!!!が……っ」
まさか毒が入っているなんて。