暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
―――――――パリーンッ!!!
フィグリネ様の持っていたコップが地面に落ちその形を崩す。
喉に手を当て苦しむフィグリネ様と、ただその場の恐怖に何も出来ず叫ぶことしか出来ない側女様方。
そして…いきなりの出来事に頭がついていけていない私…。
まって。さっき入れたのは私だ。しかし、毒など当然入れていない。
そうすると怪しいのはそのお茶をプレゼントした侍女か、もしくはその他でここに入る事が出来る誰かになる。
先ほど使っていたのだからカップには問題はなさそう。
だとすると、お茶の葉に毒草を紛れさせていたのか………注ぐ際に使用したメリオールに毒を前もって付着させていたのか。
どちらにせよこの段階では何が原因なのか分からないが、取り合えず今しないといけない事は…………フィグリネ様の救済だ!!
ここに来てからは使わないように隠していた力だが……生死を問う状況だし、幸い他の側女様は混乱して見ていない。
早くしないと兵士が来てしまうから、この際は早くした方がいいみたいね。
私は覚悟するとフィグリネ様の元へゆっくりと近づき、その場にしゃがみ込む。
そして先ずは生きているかを確認。
脈は弱いが幸い気を失っているだけで、これだったら何とか力を使う事が出来そう。
取り合えず苦しそうにしていた喉に軽く手を触れてみる。そして……集中して力を注いでいく。
先ずは喉から。そして……そこから下へ行き全身へいきわたるようなイメージで慎重に状態を癒していく。
実は毒の分類を一度治した事があり、村で食中毒が流行った際使用した。
ウイルスや毒を浄化する事もできるようで、恐らく今回も中へ入ってしまった毒を浄化できる……はず。
緑色の光が体を包み、次第に脈も正常値に戻っていった。
つまり…………
「成功…した」