暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
フィグリネ様の罠
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「聞いた?」
「聞いた聞いた!!ビックリしたよね~。まさかあんな事するような人には見えなかったのにね」
大分日が傾いた夕暮れ時。
あれ以降、いつものように部屋の中に閉じこもっていると、外から何やら面白おかしく話をする侍女の声が聞こえてきた。
この声は……マルタエノとパロマだったかしら。
そんな事を何気なく思いつつ、手に持っていた本に目を通す。
晩餐会に行くのは私でない。それは分かっているし望んでもいない。
私はただの第8妻であり多数いる側女の一人。アルヴァン様の寵愛が受けれるなんて思ってもいない。
……だけど、王子様の妻である以上一定の知識は必要だと思うから、時間があるときはこうして本を見るように今はしている。
それに……居なくなってしまって少し退屈だし、こうしていないと中々時間が経たないっていうのもある。
新しく来てくれた子たちは確かに私によくしてくれるけれど、やっぱり違う。
ただそれが任務だから仕方なくしているだけのように見える。
そう思ってしまうのは恵まれているからなんだと思うけれど、アニ……が私に残していったものはあまりにもズル過ぎる。