暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
――――――向かった先は。
「す、スフィア様……!!?」
驚いた表情をしつつ私に深くお辞儀をする二人の人物。
それは。
「あなたがチベットとギャビンですね?」
アニが親しくしていると以前言っていたこの二人。
一人は第2妻リゼ様の侍女で、もう一人はどの側女様にもついていない一般の侍女。
この人達ならもしかすると何か知っているんじゃないだろうか。
「アニの事……先ほど聞きました」
「「………っ!!」」
私がそう口に出すと目を見開いて驚いた。
まさか私の元に入るとは思っていなかったのか。
「それで……私達の元へ来られたのですか?」
「……えぇ」
何とも言えないような空気がその場に流れる。
「今は私の侍女でないけれど、私の侍女だったことに変わりわないの。だから、少しでも良い。分かっていることがあれば教えてほしい」
私の声が沈黙によりその場に響く。
「………スフィア様は変わられましたね」
「え?」
苦笑するチベットに訳が分からず聞き返してみたが、その答えは教えてもらえず代わりに私の知りたかった事を話し始めた。
「結論からお話致しますと証拠は見つかりませんでした」
「……そんな。では、どうしたら……!」
「落ち着いて下さいませ。まだ続きがございます。証拠はございませんが……犯人と決定づける証拠もないのです。ただ側女様方の証言だけで犯人に仕立てられているのでございます。確かにアニが淹れたお茶には毒が入っておりましたが、それはフィグリネ様が淹れてほしいと途中支持されて淹れさせたものだそうです。初めから用意されていた紅茶の葉。そしてメリオール。アニはただ淹れただけでございます。知らぬ間に誰かがこっそり毒を仕込んだかもしれませんし、メリオールに偶然何らかの形で毒となるものが付着し、それが紅茶の葉と混ざり合う事で反応を起こし毒となったのかもしれません。つまり、あちらも証拠不十分な訳でございます」
証拠不十分なのに処罰などしたら問題になる。
無実の者を処分するのは品格にも影響を与えかねないからだ。
ならば私が動くしか他ない!
「この中で何かをあの方に伝えられるのは私だけ…。私が直訴します。そして……アニを釈放させます」
「そ、そんな事をしましたらスフィア様が怪しまれかねません!!」
「私達も助けたいのは同じ気持ちでございます。しかし、今このような状態で動かれるのは好ましくないと思われます!!」
怪しまれる……か。
皆そう言うのね。
だけどここで待っているだけじゃ嫌なの。
だから今直訴したい。