暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
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いつもの侍女が姿を見せる。
「怪しい動きをしておりましたスフィア様を捕らえ牢に入れました」
「あら、仕事が早いのね?ありがとう」
報告を受けたフィグリネ様はそう言って艷やかに微笑む。
薬が効いたのか昨日よりも体調が回復されているご様子に、思わず侍女も笑顔を見せた。
「そのご様子ですと明日の晩餐会には問題なく出席なされますね」
「えぇ、医官が見てくださったおかげだわ。感謝せねばなりませんわね」
本当はすっかり体調など良くなっていたが怪しまれてはならぬと、少しの演技を続けている。
それに皆騙され、少しずつ回復した素振りを見せれば完璧だ。
「それより……刑は決まったのかしら?」
「……一応捕らえる事には成功しましたが、王子様の許可なく行う事は出来ませんので、只今連絡待ちでございます」
「私(わたくし)をなき者にしようと彼女らはしたのに、アルヴァン様は一体何を考えておられるのかしら?すぐ処罰するべきだと思うのに……」
例えハレムで起こった問題であっても、旦那である王子様はそれを知った上で処罰を決める権利がある。
だから今回もアルヴァン様のところへ申告書が行っているのは分かるわ。
しかし、早くしてほしい私(わたくし)にとってその待つ時間とやらは苦痛であった。