暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
…………これでいい。
仮に阻止しようとしているのがバレたとしても、何らかの理由を付け、その侍女に罪をかぶせればいいもの。
私(わたくし)の作戦は完璧よ。
フィグリネ様から指示を受けたその侍女は、早速阻止をしてくれそうな侍女の元へ足を運ぶ。
「…………私に何のようでございますか?」
「貴女にお願いがあってきたの」
そう言っていかにも怪しい笑みを浮かべる。
「……………私はもう動きたくありません」
「どうしてかしら?」
「貴女は私の望むものを一度たりともくれた事はありませんでした。本当に望むものを………」
その目は辛そうに、そして私の依頼を断るようだった。
確かに今までは望むものを知っていながら与えることは出来なかった。
それは私がしたところで、どうにもならない問題であったから。
逃したところで私にも被害がくるかもしれないものであったからだ。
しかし今回は……………………どうかしら。
フィグリネ様は罪を犯そうとしている。
そして私はそれを止めない。
その上加勢をする。
それによって私は今まで通りフィグリネ様の元で無事使える事ができ、信頼も得れるわけだが。
この侍女がもしフィグリネ様の命令で動いていたとなれば、フィグリネ様は恐らくこの侍女を切り捨てるだろう。
そして私にもその火の粉が降りかかる。
それならば逃げ道を褒美と言葉を変えてつくるのも有りだと思うのよね。
「今回は貴女が本当に望むものを与えましょう。………母国に帰る手伝いをしても良くてよ?」
そしてこの子は身を隠した罪人となる。
この子が身を隠す事で私もフィグリネ様の事も公にされる事もない。