暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
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時間は少し遡り離宮に到着した一同はアルヴァン王子と面会をしていた。
「この度はこのような場所に来てくれるなんて驚いたわ!何もおもてなしできへんと思うけど、楽しんでいきなされ」
余を前にしても物怖じ一つせず、王族とは思えない口調でペラペラと話す王子は、確かに赤い髪をしていた。
これは先程見たガルデル王子とは比べ物にすらならないほど、その差は歴然としている。
「こちらこそ何の連絡もなしに訪ねてしまいすまない。この国に来たのでせっかくだと各町を回らせて頂いているのだ」
「なに、気にせず回ると良い。この辺は俺が管理してる区域や。俺の名前を出せばどんなところにやって入れるで」
そう言って陽気に『ハハハッ!』とアルヴァン王子は笑う。
この礼儀のなっていない王子なら、確かに奴隷を各国で買い漁り、働かせているというのも納得が出来る。
余の妃もそんな犠牲の一人だと考えただけでこの男が急に腹立たしい。
今にも切り捨ててやりたいところだが、騒ぎを起こすわけにはいかぬのでここはグッと気持ちを抑える。
取りあえずどこにいるのか聞き出さねば、場合によっては作戦が失敗で終わってしまう。
「ところで耳にしたのだが、貴殿が奴隷を買っているとは本当だろうか?」
「…………………一体何のことや?」
その言葉にピクリ…と反応をした後、何事もなかったように笑みを浮かべた。
「何をって隠さなくても良かろう(笑)他国で奴隷を買われていると周りが言っていたが、その事で興味があったのだ」
「いやぁ〜お恥ずかし!そんな事まで聞いたんやな(笑)」
「存じているかは知らないが我が国は人身売買を禁止しているがゆえ、奴隷を買う者はどのような目的で買おうと思うのか知りたいのだ。良ければ聞かせてはくれぬか?」
これは情報を話させる一つの手段。
「まぁ、そこまで言うんなら話してもええで!人身売買を禁止しているアンディード帝国にとっては変な話になるんやけど、この国では他国との交流で女を贈ることは良くある事なんや。側室の女を贈っても良いんやけど、そしたら他国の反感を買う。侍女にしても貴族出の為、そちらの反感を買う。つまりどちらにせよ反感を買うわけや。それやったら奴隷を買って侍女の立ち位置にする事によって問題なく相手へ贈れる。なおかつ交流にもなる。それが奴隷を買う目的や」