暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
…………人身売買を禁止にしている我が国にとっては許せない話しであるが、つまり買われた者は国外にいる可能性が高いな。
そうなれば……妃も既にここにはいないと解釈した方が妥当…………か。
様々な思いを心の中で処理しているとアルヴァン王子は続いて思い出したかのようにふと口を開いた。
それは余達が待っていたもので、アルヴァン王子は余達に貴重な情報を教えているとは思ってもいない事だろう。
「やけど一人……良い奴隷がおったわ!これも他国で仕入れた奴なんやけど、それが凄く良くてな。前にどっかの奴隷をした事があるみたいで色んな事を初めから知ってるし、ある意味レアものやと思って、普通に侍女として働かせてるんやけど、一度陛下にもその侍女を見てもらいたいわ(笑)」
『他国で買った』『色んな事を知っている』『侍女として働いている』
こちらにしては十分過ぎる情報だ。
………………がしかし、最後に決め手とやらがほしい。
妃だと思わせる決定的な。
「ほぅ…………それはぜひ見てみたいものだ。貴殿がそこまで自慢なされる奴隷の侍女ならば、他にもさぞ珍しいとこがおありなのだろう」
「いや、特に目立った特徴はないで?やけど透き通るようなあの瞳が凄く魅力的やったんや。まるで…………聖水のよう!」
「聖水?」
思わず聞き返す。
「そうや。この国にとって雨は恵みとも言われ、水を連想させる青色というのは国の人から喜ばれる色なんや。ただそいつの瞳が偶然青く、綺麗やと思ったから侍女にしたんやが………実際には仕事の出来る上玉や」
そう言えば妃の瞳は……………青かった。
となれば、ほぼ確定か。
「ならば、その綺麗な瞳とやらを是非後で見せてくれ」
「あぁ、もちろんや!何なら今からここへ呼ぶわ」
そう言うと近くに控えていた侍女を自分の元へ呼び、命令を受けた侍女は早速部屋から出ていった。
後ででも良かったのだが、これは思ってもみない好都合だ。
探す手間が省け、その上顔までも確認出来るなど。
取りあえずその後の対策とやらを考えておかねばな。