暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
まず向かったのは一階にある大きな会場らしき場所で、立ち止まると侍女が説明を始める。
「こちらはアルヴァン様や側女様方がご一緒にご会食される際使用致しますお部屋でございます。基本集まり以外では使用致しませんがお客様などがいらっしゃった際にはこちらを会場として使っておられるみたいでございます」
「へぇ~……お客さんを招く会場だからか広いんだね。側女様方にとっては広すぎると感じる方もおられるのでは?」
その説明に後ろに立っていたファンが右手を顎に当て、興味深そうにそう問いかけた。
「いえ、実は反対に広い方が良いという側女様方のご意見の元、このような広さで数年前に改装されたのでございます。側女様は12名いますのでこのぐらいの広さが丁度良いみたいでございます」
その返答にファンは大きく驚いた。
「12名も!?それはたくさん側室の方を娶られているんですね~……!」
そして、
―――――チラッ。
分かりやすいほどファンは何か言いたげにこちらをチラチラ見だした。
何を言いたいのか大体分かるが一応聞いてみる。
「何だ」
「いえ、何でもございません」
あれだけ分かりやすい反応をとっておいて、知らないふりをするつもりだ。
「言っておくが余には側妃など要らぬ。あの妃さへいればそれで良い」
直接余の前で言う愚か者は流石におらぬが、陰で官僚達が側妃だの正妃を変えるべきだのくだらない話しているのは知っておる。
世継ぎの問題や血筋の関係でそう言っているのだと思うが、正直他の女を王室に入れるつもりはないし、関係を持とうとも思わない。
例えそう言った問題があろうとも余には関係ない。
「……話で聞いていた通りでございますね」
「……何がだ」
急に口を開いた侍女に聞き返すと、その侍女は微笑ましく口を開いた。
「アンディード帝国の陛下はお妃様を寵愛されおり、他の方など目にも入らない……とお聞きいたしましたが、今見ておりますとまさにその通りでございました」
手を口元に添えその侍女はそう言って軽く、フフっと笑う。
離れた土地だと言うのになぜそう言ったような話が流れているのか逆に不思議だ。