暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
一瞬何が起こったのか理解出来なかったが止めようと必死なレイジュさんと、顔を真っ青にし叫ぶギャビンさん。
そしてもの凄い顔でこちらへ向かってくるフィグリネ様を見て、私は自分が今非常に危険な状態である事を理解したと同時に、
動かそうとしてもそこから身体が動かなくなってしまった。
「そこからお逃げ下さい!!!」
ギャビンさんの焦った声が聞こえてくるが、どうやっても身体がその場から動かない。
以前、レイディーナ家の家具屋の職人が宮殿へ足を運ばれた時に首元へ刃物を突き付けられたことがあったからか、
それを思い出して怖くなる。
このまま誰も助けに来ぬまま死ぬのではないか。あの時感じた絶望感とその時の痛みが鮮明に蘇ってくる。
「死になさい!!!!」
距離が数メートルと近くなり、逃げる事も叫ぶ事すらも出来ない私はただギュッと目をつぶる。
目をつぶったからと言って痛みが軽減するわけではないが、刺される瞬間を見るよりはマシだと思ったからだ。
フィグリネ様の足音が近づいてくるにつれて次第に大きくなり、
恐らくあと少しで刺されるであろうその時、
_____グイッ。
「え?」
誰かが目をつぶって硬直する私の腕を強引に引っ張った。