暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「余の妃だが……何か問題でも?」
抱きしめたまま陛下はアルヴァン様へ向けてそう口を開き、対するアルヴァン様は…………………いきなりの出来事に何やら放心状態。
それもそのはず今まで金髪だった者が、いきなり黒髪になったら誰だって戸惑うわよね。
ついでに言えばフィグリネ様もうつ伏せていた顔を表に上げ、こちらを見ては目が外に飛び出そうなほど驚いた表情をされていた。
陛下達に迷惑が掛かりそうだったので正体を明かせなかったのもあるが……………もし私が妃だと周りにバレたら色々と面倒な事が起こりそうな気がして、言えなかったのもある。
現にこうして私の正体を知ってしまったアルヴァン様がおかしな顔でこちらを見ていた。
「…………周りをよく見て、アルヴァン王子が一番正しいと思われる決定をして下さいませ。そう思い判断をなさったのであれば、どのような判決であろうとそれが正しいです」
このような事を私が言える立場かどうか分からないけれど、上に立つと言う事はどのような時でも公平な判断をしなければならないということだ。
アルヴァン様に軽く一礼すると私は陛下と共にその場を後にし、スフィア様のいる場所へと向かった。
_____ガラガラ…………。
スフィア様が運ばれたとされる医務室のドアを開けると、そこには宰相様とクレハ、そして第一騎士団団長のギャビンさんがスフィア様がいられるベッドの周りを囲んでいた。
「…………陛下」
こちらの方を見てそのように口にする宰相様の表情はあまり宜しくない。
「スフィア様のご容態は?」