暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
陛下から少しは聞いたけれど、そんなにも悪いのだろうか?
近づいてベッドの中を覗きこんでみると、肌の血色も悪くやつれたような顔をしたまま眠るスフィア様がそこにはいた。
「………………っ」
以前とかなり違ったそのご様子に思わず絶句する。
見た目などは変わりないが、明らかに顔色が悪すぎる……。
「あまり……宜しくないと診た医者が言っておりました。十分なご飯も与えられず牢屋に閉じ込められていたからか、体温もかなり下がっているようでございます」
その反応を見て、宰相様が近くから説明を入れる。
あまりに青いスフィア様の口元付近へ気になって耳を近づけると、息はしっかりとしていたので取りあえず一安心…。
これで息をしていなかったら、私の力は発揮できない。
生きているのであれば大丈夫…。
「最善を尽くしたのですが……薬を受付けてもらえず…………大変申し訳ございません」
スフィア様を診たというそのお医者様が私へ向けて申し訳なさそうに頭を下げるが、
「大丈夫よ。後は私に任せて」
そう優しく声をかけスフィア様の胸元に手を当てた。
『先ずは弱った心臓を回復させよう…』
目をつぶり力を使おうとした時、後ろからある人の声が聞こえ思わずその手を止める。
「どうかされましたか?」
この声は、
「そのような状態で力を使って…大丈夫なのか?」
陛下だ。
「大丈夫でございますよ。心臓が動いてさえいて下されば回復させる事が可能ですので」
安心させるようにそう陛下へ向けて微笑んだつもりだったのに、
「そうではない。そなたの身体は大丈夫なのか…?そんな状態で使って問題はないのか」
心配をしていたのはスフィア様でなく私の方であった。
「……問題なくはないです」
以前も力を使い何日も寝込んだ事があったので、今回も陛下はその事を思い出し心配しているのだろう。
こんな疲れきった状態で力を使えば更に体力は消耗され、最悪何日も寝込むんじゃないかって。
確かに……そうなるかもしれない。
けど、
「少し…使うだけでございます」
目の前で助けられる命があるのに、助けないといった選択は私にないし、そもそもスフィア様を危険に晒したのは私だ。
その分責任もある。
だから……例え自分を犠牲にしてでも助けたい。
私は陛下にそう嘘をつき、再び手に意識を集中させる。
先程見た陛下の不安そうな顔が頭から離れないけれど…………。
全ての感情を無に変えて、ただ…………力を注ぐ事だけに、意識を持っていく。
心臓…………そして全体へ。
「……………っ」
だいぶスフィア様の身体が弱っていたからか、体力の消耗が激しいけれど何とか気を保ちその場で踏ん張る。
遠くから焦ったような陛下の声が聞こえた気がしたが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
「……………はぁ……はぁ………っ」
部屋の中が暑かったり、激しい運動をしたわけでもないが、顔から汗が流れ出る。
ある程度回復させるとすっかり体温の戻ったスフィア様は苦しそうな表情から一変落ち着いたような表情になった。
「……………出来…た」
フィグリネ様の時よりかは簡単な治療であったが、そう言えば私も地下牢に入れられ疲労や体温低下などで身体が限界であった事を思い出し、同時に全身の力が一気に抜ける。
____フッ。
踏ん張っていた足はガクッ…と曲がり、力の失った身体はそのまま地面を目掛けて崩れ落ちる。
_____ポプ……。
「大丈夫ではなかったではないか………」
「……………へへ」
辛うじて開く目でその人物を見上げると、眉間にシワを寄せ困ったような表情をした陛下が私の身体を支えたまま私を見ていた。
「へへ、ではない」
「だって……もし大丈夫でないと言ったら、陛下はお止めになられるでしょう…?」
「当たり前だ」
即答で返ってきた言葉に思わずまた笑う。
「何が可笑しいのだ」
「いえ、ただ…………………………陛下であればそのように仰るのでしょうと思いましたので」
本当の事を伝えたら止められるだろうと分かっていたから、あの場では伝えれなかった。
近づいてベッドの中を覗きこんでみると、肌の血色も悪くやつれたような顔をしたまま眠るスフィア様がそこにはいた。
「………………っ」
以前とかなり違ったそのご様子に思わず絶句する。
見た目などは変わりないが、明らかに顔色が悪すぎる……。
「あまり……宜しくないと診た医者が言っておりました。十分なご飯も与えられず牢屋に閉じ込められていたからか、体温もかなり下がっているようでございます」
その反応を見て、宰相様が近くから説明を入れる。
あまりに青いスフィア様の口元付近へ気になって耳を近づけると、息はしっかりとしていたので取りあえず一安心…。
これで息をしていなかったら、私の力は発揮できない。
生きているのであれば大丈夫…。
「最善を尽くしたのですが……薬を受付けてもらえず…………大変申し訳ございません」
スフィア様を診たというそのお医者様が私へ向けて申し訳なさそうに頭を下げるが、
「大丈夫よ。後は私に任せて」
そう優しく声をかけスフィア様の胸元に手を当てた。
『先ずは弱った心臓を回復させよう…』
目をつぶり力を使おうとした時、後ろからある人の声が聞こえ思わずその手を止める。
「どうかされましたか?」
この声は、
「そのような状態で力を使って…大丈夫なのか?」
陛下だ。
「大丈夫でございますよ。心臓が動いてさえいて下されば回復させる事が可能ですので」
安心させるようにそう陛下へ向けて微笑んだつもりだったのに、
「そうではない。そなたの身体は大丈夫なのか…?そんな状態で使って問題はないのか」
心配をしていたのはスフィア様でなく私の方であった。
「……問題なくはないです」
以前も力を使い何日も寝込んだ事があったので、今回も陛下はその事を思い出し心配しているのだろう。
こんな疲れきった状態で力を使えば更に体力は消耗され、最悪何日も寝込むんじゃないかって。
確かに……そうなるかもしれない。
けど、
「少し…使うだけでございます」
目の前で助けられる命があるのに、助けないといった選択は私にないし、そもそもスフィア様を危険に晒したのは私だ。
その分責任もある。
だから……例え自分を犠牲にしてでも助けたい。
私は陛下にそう嘘をつき、再び手に意識を集中させる。
先程見た陛下の不安そうな顔が頭から離れないけれど…………。
全ての感情を無に変えて、ただ…………力を注ぐ事だけに、意識を持っていく。
心臓…………そして全体へ。
「……………っ」
だいぶスフィア様の身体が弱っていたからか、体力の消耗が激しいけれど何とか気を保ちその場で踏ん張る。
遠くから焦ったような陛下の声が聞こえた気がしたが、今はそんな事を気にしている場合ではない。
「……………はぁ……はぁ………っ」
部屋の中が暑かったり、激しい運動をしたわけでもないが、顔から汗が流れ出る。
ある程度回復させるとすっかり体温の戻ったスフィア様は苦しそうな表情から一変落ち着いたような表情になった。
「……………出来…た」
フィグリネ様の時よりかは簡単な治療であったが、そう言えば私も地下牢に入れられ疲労や体温低下などで身体が限界であった事を思い出し、同時に全身の力が一気に抜ける。
____フッ。
踏ん張っていた足はガクッ…と曲がり、力の失った身体はそのまま地面を目掛けて崩れ落ちる。
_____ポプ……。
「大丈夫ではなかったではないか………」
「……………へへ」
辛うじて開く目でその人物を見上げると、眉間にシワを寄せ困ったような表情をした陛下が私の身体を支えたまま私を見ていた。
「へへ、ではない」
「だって……もし大丈夫でないと言ったら、陛下はお止めになられるでしょう…?」
「当たり前だ」
即答で返ってきた言葉に思わずまた笑う。
「何が可笑しいのだ」
「いえ、ただ…………………………陛下であればそのように仰るのでしょうと思いましたので」
本当の事を伝えたら止められるだろうと分かっていたから、あの場では伝えれなかった。