暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】







「……………ア……ニ」

目を覚ますと目の前は真っ白な天井が広がっていた。

独特な薬草の匂いが鼻をかすめ、ここはどこだろうと起き上がって辺りを確認する。


当たり前だがここは私の寝室ではなかった。


「…………ここは確か、医務室…?」

あると聞いたことはあったけれど、実際に入ったのは初めて。

仮に熱を出してもこの宮の専属医師が部屋まで来てくれるので、側妻の大半はここへ来たことがないだろう。  

主にここは医師の休憩室と侍女などが怪我をした際に見てもらえる診療所も兼ねているらしいけれど、

ベッドがあるとは思っていなかったわ。

それよりもなぜ私はこのような場所に…?



確か捕まえられて………牢屋に入れられて。

それで………………。


____シャ…。

「あら、お目覚めでございましたか」

「あなたは…………」

ベッドの周りを囲むカーテンがいきなり開けられたと思うと、そこから一人の侍女が入ってきた。

この侍女はアニと親しくしていた、


「ギャビン……」

私が名を口に出すと、ギャビンは私に優しくニコッと微笑んだ。

「お目覚めなのでしたらお医者様を呼んでまいりますので、もうしばらくお待ち頂いてよろしいでしょうか?」

__コクリ。

その言葉に取りあえず首を縦に振った。

……………が、ギャビンが医務室を出る前に私は後ろ姿に声をかけた。

「私は一体なぜここにいるの?牢屋に連れて行かれたはずなのに……何で」

牢屋に連れて行かれご飯は一日二回、しかもスープのみという状況の中、冷たくなる身体を感じながらただ『私は何をしたかったのだろう』とぼんやり思っていたあの時。

一刻も早くここから出てアニを助けたいという思いの中、擦り減っていく体力。

あのような場所では十分に眠れず、疲れがピークに溜まり朦朧とする意識の中、そういえば…………誰かが来たような気もするけれど、

もしや私がここにいるのはその人と何か関係があるの?

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