暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「……………………フィグリネがユリノーゼに嫌がらせをしていた事はついこの間…知ったんや。それとあの…毒殺未遂事件か?真実を知らずにフィグリネの表だけの言葉を信じ込んでいた。フィグリネがそんな事をするとは思えんかったんや」
アルヴァン様のその表情はとても悲しそうで、信じていたフィグリネ様から裏切られたからか悔しそうにも見えた。
「…………無理もございません。私は第8妻でありフィグリネ様は第1妻でございます。その分アルヴァン様と一番長い時をご一緒にされているからこそ、それは仕方のない事なのかもしれません」
愛着というのですかね。ずっと一緒に暮らしているとその人の事を知ったつもりになるから、どうしても疑えなくなってしまう。
表では素敵に振る舞う人間ほどそうだ。
「…ですので、そのような表情をされないで下さい。私はアルヴァン様が信じてくださるだけでもう十分ですので」
フィグリネ様からはこれまで酷いことを確かにされたけれど、アルヴァン様がこのように悲しそうにされるのは私としては嬉しいものではない。
いつも通り笑っていてほしい。
「………しかし、このような状況になった以上、フィグリネにはそれ相応の処分が必要だと思っている。例えユリノーゼが気にしていなくともや」
「………フィグリネ様は今どちらにおられるのですか?」
「ユリノーゼが入れられていた処刑場の近い牢屋やけど……それがどうしたんや?」
と言う事は処刑執行待ち……と言う事なのね。
冷たい意志の地面に腰を下ろし、満足にご飯も与えられないあの処刑をただ待つだけの絶望に満ちた部屋……。
「ユリノーゼ?」
私が無言だったからか、心配そうに聞いてきた。
「……失礼致しました、何でもございません。ただ………」
「ただ…?なんや言ってみ」
このような重大な事を私が決めれるとは思っていないけれど、せめて今の思いだけは伝えておこう。
「あのですね――――――………」