暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「ユリノーゼ……」
「え?」
「気軽にユリノーゼとお呼びください。アニーナ様」
友達がいた記憶はこれまででなかったけれど、アニーナ様であれば親しげにそう名を呼んでほしい。
スフィア様でなく、ユリノーゼと。
……あ、でも急に親し気な態度をとって無礼だと思われても嫌だ。
「もし……呼んでいただけるのであればで構いません」
私だけ仲良くなった気でいたけれど、やはりお相手はお妃様であるから態度には気を付けないと。
「何を考えているの?」
「あ……いえ何でもございません」
「いえ、何だか悩んだ顔をしていたわ」
アニーナ様は意外と……というかかなり鋭い。
しかし、さっきの事をアニーナ様にお話しするわけにはいかず、
「お気遣い頂きありがたいのですが本当に何もないのでございます。ただ……まだ疲れの方がとれていないものでして」
「そうなのですね。ユリノーゼは私の弟と近い歳であるからか、余計に心配してしまいます…」
アニーナ様はそういうと苦笑してみせた。