暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
「失礼致しました、陛下」
「別に良い。ほら行くぞ」
陛下の腕に手をまわし、エスコートされるがまま私は陛下と共に馬車の停めてある場所へと移動をした。
馬車の近くにはたくさんの兵士や騎士達が整列しており、皆ガルゴ王国の者であった。
「……陛下これは」
「ガルゴ国王が迷惑をかけたお詫びだと貸してくれたのだ」
「凄い……」
普通こんなに大勢国の騎士や兵士を人に貸すなんて……しかも他国の陛下相手に貸すなど、何て心の広い方だろうか。
迷惑をかけたお詫びだと言うが……実際は国王様が何かしたわけでもないのに。
馬車の中はガルゴ王国に来た時と同じ内装で、座席はふかふかだった。
陛下の向かいの席に私が座り、馬車の周りを馬に乗った護衛の騎士や兵士が取り囲む。
この大勢の中にクレハやギャビンもいるのだろう……。
「では、陛下様、お妃様。また来国られる日を心待ちにしております」
「あぁ。国王とは近々お目通りする事になるだろう。宜しく伝えておいてくれ」
「かしこまりました。道中お気を付け下さいませ」
空いた窓からガルゴ王国の宰相様に陛下はそう声をかけると、馬車はゆっくりとアンディード帝国に向けて出発する。
次第に加速しだすとゆっくりと窓を閉めた。
ここからアンディード帝国まではまた日がかかり、着くのは少し先になるけれど………案外ここでの生活も悪くなかったかもしれない。
荒波に巻き込まれはしたが、ユリノーゼに出会う事ができ、ギャビンさんやチベットさんなどの人との繋がりを知る事ができた。
そう振り返ればこれもまた一つの学びなのかもしれない。
時間が出来たら……ユリノーゼに会いに行こう。そして次はもっとゆっくり友達のような会話ができるといいな。
長らく私は馬車の中で揺られながら心の中でそう思った______。