暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
そして、正妃任命の儀が執り行われる予定の会場では陛下とファン宰相、そしてこの儀式を任された重要な官僚達がどのように仕上げるのかをその場で意見を出し合っていた。
「来賓される王族の方はこの位置に席を設置するように考えておりますが、その件につきまして皆さまはどのように思われますか?」
「そう……ですね。ここであれば陛下の座られるお席と官僚らの座る席どちらも良い感覚でありますので、私もそこが最適かと思います」
「しかし、少し下がりすぎてはいないですか?このような配置では他国の王族の方が席で目立ちません」
「目立たなくてよいのです。これは正妃任命の儀であり他国の王族を招いた宴会ではないのですから。それに、近すぎては仮に暗殺部隊が紛れていたとしても対処に苦労する恐れが出てきます」
「確かにそうでありますな」
「では、初めにその者が申した位置で準備を進めよ」
陛下がそう声をかけると担当に分かれた官僚らが準備に取り掛かった。
「失礼致します、陛下。頼まれておりました春期騎士及び兵士志願者試験の結果が出そろいましたのでご報告に参りました」
次の担当部門に移ろうとしていた時、資料を手に持つギャビンが姿を見せた。
「出たか」
渡された資料をその場で目を通してみると、そこには思っていた通りの名を名簿で発見した。
「……クレハの言った通りか。スコア的にも能力的にも今後特に伸びしろが見込まれそうな人物であるな。これで我が国の兵士に留めておくのは少し勿体ない。………であれば」
陛下は資料から目を離し、直ぐ側で控えるギャビンを近くに呼び寄せると、
「この者なのだが――……」
「――――……かしこまりました。では、直ちに手配致します」
命令されたギャビンは何事もなかったかのような表情でその場を後にした。