暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
確かランジェリ家とは代々騎士としてこの国に仕える伯爵の爵位を持つ一族で、他にもそのような者はこの宮殿には多くいると聞いた事がある。なので特に珍しい事でもない。
………が、この場に出てくるにしては凄い顔ぶれだと思う。
「ここに諸君らを呼び寄せたのは他でもない、結果についての話だ」
“結果”という言葉に皆様々な反応を見せる。驚く者や心配そうな目つきの者。苛立ちを露わにする者に、自信げな表情をする者。
俺はただジッと次に発せられる言葉に耳を傾けながら静かに立っていた。
「それぞれ希望する部署の筆記試験や実技試験、そして面接を受けてもらったが、国で用意したレベルの高い問題に志願者達はさぞ驚いた事だろう。今回はお妃様が正妃様になられると言う事で、有力な人材を確保するべくよりレベルの高い問題を用意した」
その言葉に自信げな表情を見せていた者達は顔を引きつかせた。
ただでさえ宮殿の試験はどこの大学試験よりも、大手の企業試験よりも難関だと聞いているが……それよりも今回はさらにレベルの高い問題だなんて。
筆記試験が苦手の俺は………以上に難しかったあの時の問題を思い出しながら、思わずその場で頭を抱えそうになった。
実技試験は通っても、筆記試験で落とされる確率は大いにある。
「結果を見ながら有力だと思った志願者のみ今回は選ばせてもらったので、今からこの場で発表する」
そう言うと第一騎士団団長は手も持っていた紙をその場で広げ、読み上げた。
「ではまずは兵士志願合格者の番号を発表する」
その言葉で辺りはシーンとなり、皆が読み上げられる番号に集中する。
「志願番号21番」
―――ざわ……。
いきなりの番号飛びに辺りが騒がしくなる。
「42番、47番、78番、98番、113番、133番、136番、140番~………778番、951番。後の者は皆不合格だ」
…………え?
「受かった者は騎士志願合格者発表が終わるまでその場で待機し、そうでない者は速やかにその場から退場するように」
確か今回の兵士志願者は千人を超えたと志願するとき受付で言っていた。
受付順に志願番号が発行される為、宮殿から離れた里に住む俺が受付したのは最後の方だった。
そしてその志願番号とは1015番。かすりもしないまま残りは切り捨てられてしまった感じだ。
「………マジかよ。やっぱ筆記試験が悪かったのか?柄にもなく大学に通う姉貴に勉強教えてほしいって頼んで勉強したのに、帰ったらぜってぇー姉貴に馬鹿にされるわ…」