暴君陛下の愛したメイドⅡ【完】
聞いていた通り城下町ではたくさんの店が立ち並んでおり、国境付近の町よりも華やかな雰囲気だった。
「おじさん、これ……」
「あ~それかい?見た目は普通の切れる剣と変わりないんだけど、刃を全て潰しているから切ろうとそても切れないよ?子供や剣を始める初心者向けに販売しているんだけど、切れる剣が欲しいんならこっちだよ」
切れないのであれば外で自主練しても大丈夫だよな?
だって切れないんだから。
「おじさんこれ頂戴」
「え!君これでいいのかい?見た感じだと初心者には見えないが……」
「なんで分かんの??」
「そりゃ~手さ!手を見れば剣を握っているなんてお見通しだよ(笑)」
そう言われ自分の手を見ると、練習によりたくさんのタコや傷跡があり納得した。
「それ練習用で使うんだよ。刃が潰れているのだったら外で振り回しても問題ないだろう?」
「まぁね。でも周りには十分注意した方がいいよ。例え刃が潰れていたとしても当たれば痛いからね」
「気を付けるよ」
おじさんは肩にかける事ができる剣専用の袋に入れるとレジ越しに渡してくれた。
「代金はここに置いてるから。おじさんまたなー!」
「あぁ。また何かあれば寄るといいさ」
おじさんにお礼を言うとその場を後にし再び町通りを歩いていると、
「よぉ、お前兵士志願だったくせに騎士になったあの時の庶民じゃねーかよ(笑)」
「ここであったのは何かの縁。ちょっとこちらに来てもらおうか?」
貴族のような見た目の男一人に俺と同じく一般人のような男二人が俺に声をかけてきた。
見ると横には剣をぶら下げている。
「なんで俺がお前らと一緒にいかねーと悪いんだよ」
馬鹿にしてくるような言い方に何かを感じ、取り合わないような態度を取ったが、
「連れない事いうなよ(笑)ちょっとこっちにくるだけだ」
「ほら、行くぞ」
「……チッ。面倒くせぇー…」
怯えてなどいないがここで問題を起こせば後々困るので、取り合えず大人しく路地裏へとついて行った。
暗くて少し薄気味悪いところだが、あの時アニ姉がさらわれた路地裏に比べればまだ治安が良い。
と言う事は宮殿の見回りが行き届いていると言う事だ。